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宇宙開発のイメージ

速度増分・デルタV

  • よみがな: そくどぞうぶん・でるたぶい
  • 英語名: Delta V

速度増分・デルタVの概要

速度増分・デルタVとは、宇宙機が軌道変更や加速を行うために必要な速度の変化量のことである。


速度増分・デルタVの詳細

速度増分・デルタVとは、ロケットや宇宙探査機が運動状態を変化させるために必要な「速度の変化量」を意味します。
たとえば、地球の重力圏を脱出する、軌道を変更する、あるいは他の天体に向かうといった操作には、必ず何らかの速度変化が必要となります。
その際に「どれだけ速度を変えなければならないか」を表すのがΔVです。

このΔVは、宇宙機の燃料消費量や行動可能な範囲を決定づける指標であり、単位は通常メートル毎秒(m/s)で表されます。
たとえば、地球低軌道(LEO)に人工衛星を投入するには約7.8km/sの速度が必要となります。 これに加えて大気抵抗や重力損失の影響を考慮した上で、軌道投入に必要な速度増分ΔVが計算されます。
この他にも、LEOから静止軌道(GEO)へ移動する場合や、月・火星などの他天体へ向かう場合には、それぞれ異なるΔVが必要となります。

ΔVは単なる速度の変化量ではなく、ロケットの推進システムと密接に関係しています。
ロケットの推進力、燃料の種類、構造設計、さらには搭載可能な燃料量などが、実現可能なΔVの上限を決定します。
つまり、ΔVの要求が高ければ高いほど、多くの燃料を必要とし、結果としてロケットの質量や設計に大きな制約が生じるのです。

ミッション設計においては、目的地までのΔVを正確に見積もることが不可欠です。
たとえば、地球から月へ向かうには約3.2km/sのΔVが必要とされ、さらに月周回軌道への投入や着陸には追加のΔVが必要になります。
これらの値をもとに、必要な燃料量や推進システムの性能が決定されます。
ΔVの見積もりが不正確であれば、燃料が不足してミッションが失敗するリスクが生じます。
そのため、極めて慎重な計算が求められます。

また、ΔVは「宇宙機がどこまで行けるか」を示す、いわば「航続距離」のような役割も果たします。
限られた燃料で最大限の成果を得るためには、ΔVを最小限に抑える軌道設計や重力アシスト(スイングバイ)といった技術の活用が重要になります。
たとえば、探査機「はやぶさ」や「ボイジャー」は、惑星の重力を利用してΔVを節約し、遠方の天体へと到達しました。

このように、デルタVは宇宙機の性能、燃料効率、ミッションの可能性を左右する根幹的な指標です。
宇宙機の設計や運用において、「デルタV(ΔV)」は極めて重要な概念なのです。
宇宙開発におけるあらゆる計画の出発点であり、技術者たちはこの数値と常に向き合いながら、限られた資源で最大の成果を目指しているのです。


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