フライバイとスイングバイの違い とは?
「フライバイ」と「スイングバイ」は、宇宙探査において頻繁に登場する重要な用語です。
どちらも探査機が天体の近傍を通過するという点では共通していますが、目的や技術的な意味合いが大きく異なります。
この記事では、それぞれの定義や使われ方の違いを整理し、宇宙開発における役割をわかりやすく解説します。
結論:観測手法としてのフライバイ・軌道変更手法としてのスイングバイ
フライバイとスイングバイは似た言葉ですが、両者の最大の違いは「目的」にあります。 フライバイとは探査機が天体の近くを通過しながら観測を行う手法で、通り過ぎながら観測すること自体が目的となります。 一方で、スイングバイとは天体の重力を利用して探査機の軌道や速度を変化させる技術であり、目的地への到達や加速を効率的に行うための手段として位置付けられています。
そもそもフライバイ とは?
フライバイは、探査機が天体に接近して通過しながらその天体を観測するための手法です。
ポイントは、目標天体の近傍にとどまることなく短時間で観測を行うという点です。
目標天体に滞在するための燃料噴射を必要としないので、燃料効率や実現性の面で多くの利点があります。
そして、燃料消費を抑えつつ複数の天体を効率よく観測することも可能になります。
フライバイの詳しい説明についてはこちら
ではスイングバイ とは?
一方のスイングバイは、探査機が天体の重力場を利用して軌道を変える技術です。
重力アシストとも呼ばれます。
ターゲットとなる天体の近傍をちょうど良いタイミングで通過することにより、燃料を使わずに加速したりや方向転換したりすることが可能になるのです。
成功すればミッション効率を飛躍的に高めることができるため、航行距離の長いミッション探査計画においては多々実施されています。
スイングバイの詳しい説明についてはこちら
それぞれの言葉の使われ方の違い
ここまでの説明を聞くと、フライバイとスイングバイの微妙なニュアンスの違いに気づくことでしょう。
両者はいずれも「天体のそばを通過する」ことを指す言葉ですが、それぞれの使われ方には大きな違いがあります。
まず、フライバイは「観測」に重点を置いた言葉であり、重力の利用が目的ではありません。
一方、スイングバイは「軌道変更」に重点を置いた言葉であり、重力を活用することが本質です。
例えば、月の近くを通過するだけで観測を行う場合は「月フライバイ」と呼ばれますが、月の重力を使って軌道を変える場合は「月スイングバイ」と呼ばれます。
その天体を通過する際に何を重視するか?によって、使われる言葉が変化するのです。
軌道の詳しい説明についてはこちら
どちらも宇宙探査においてとても重要!
フライバイとスイングバイは、宇宙探査を効率的かつ実現可能にするために欠かせない基本技術です。
フライバイについては、目標天体に滞在する場合と比較して目標天体へアクセスするのが比較的容易であるという利点が非常に大きいです。
そのため、通常ではアクセスすることが難しい天体を探査したり、一台の探査機が数多くの天体を探査したりすることが可能となるのです。
また、燃料消費を削減できる点も大きく、探査機を小型にしたり観測機器を増やしたりできるというメリットがあります。
一方でスイングバイについても、天体の重力を利用して探査機の軌道や速度を変えることで燃料を節約できます。
これまでに行われてきた深宇宙探査のほとんどは、スイングバイの技術なしには実現がなされなかったといっても過言ではありません。
それほどまでに遠方の目的地へ向かうための手段として重要であり、深宇宙ミッションの成功に大きく貢献しているのです。
このように、フライバイとスイングバイはいずれも宇宙探査において重要な技術であり、今後も活用が進められていくことは間違いありません。
探査機についての詳しい説明についてはこちら
もっとフライバイ・スイングバイについて知りたい人へ
信頼できるページの記事を読むことで、宇宙線や放射線についてより深く理解することができます。
こちらのページでは、実際に宇宙開発を行っているJAXAがスイングバイについて解説しています。
こちらのページは、水星探査ミッションの運用報告において「スイングバイ」が用いられている記事です。
この場合は水星観測が行われている一方で、最も重要な目的は「水星の重力を用いた軌道変更」なので「スイングバイ」が用いられています。
こちらは日本の宇宙ベンチャー企業であるispaceが月着陸船の運用状況を報告する際に、「フライバイ」という言葉を使っている記事です。
この場合は「月を通り過ぎる」だけで、重力を用いた軌道変更をしているわけではないので、「フライバイ」が用いられています。
このように、どちらの語句が使われているのか?に注目すると、そのミッションが目指しているものをより深く理解することができるようになります。
また、宇宙開発用語集でも、フライバイ・スイングバイなどの宇宙探査機に関する様々な用語を解説しています。 詳細は以下の関連用語のページから見てみてください。
宇宙探査機に関する用語の意味の一覧はこちら
まとめ
- フライバイ:天体の近傍を通過して観測を行う手法
- スイングバイ:天体の重力を利用して軌道や速度を変える技術
- 両者で大きく異なる点は「用いられる目的」
- どちらも宇宙探査において重要な役割を果たす
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